バックアップウインドウとスケールアウト
- はじめに
長くなりそうなので結論を先にします。重複排除バックアップストレージでは、バックアップ速度のみではなくリストア速度も重要という説明をしてきました。今回は「アップグレードの方法」にも配慮が必要、という内容です。
- バックアップウインドウ
バックアップウインドウですが、『データバックアップのために使用できる時間枠』のことです。最近では、業務アプリケーションの稼働時間が長くなってきているため、バックアップに割ける時間は限られています。バックアップウインドウを長くとることは避けたいのです。
例えば、平日の深夜にバックアップウインドウが3時間とれるとして、このバックアップウインドウ内でバックアップ運用を設計し運用を始めたとします。当初は良いのですが、時間の経過とともにバックアップ運用が所定のバックアップウインドウに収まりきれない状態になります(バックアップ時間が2時間、2時間半、3時間超、というように増えてきます)。なぜなら、データ量が増加するからです(参考『世界データ生成量』)。ごく自然な話です。
データ量の増加への対応はストレージ容量を増加することで解決できます。多くの重複排除バックアップストレージは「シェルフ」追加で容量のみを増設するアップグレードで対応していきます。容量への対応という点ではなんら問題はありません(それぞれ装置によって容量増設の限界はありますが)。
しかし、『時間』の側面はどうでしょう。容量のみ増加のアップグレードではバックアップ時間が長くなることは避けられません。
- スケールアップとスケールアップ
一般のストレージ装置の話になりますが、アップグレードには「スケールアップ」と「スケールアウト」があるのはご存じかと思います。専用の重複排除バックアップストレージにも、この二種類のアップグレード方法があります。容量の増加のみにシェルフ追加で対応するのが「スケールアップ」で、容量と重複排除エンジン能力の増加に対応するのが「スケールアウト」です。専用の重複排除バックアップストレージの多くは「スケールアップ」型となります。まだ多くはありませんが、重複排除バックアップストレージでも「スケールアウト」型もあります。
- 重複排除バックアップストレージでのスケールアップとスケールアウト
スケールアップ型の重複排除バックアップストレージで問題になるのは、バックアップウインドウに収まらなくなった時のアップグレードです。これまでの装置では時間枠に収まらないので、高処理能力の上位機種に上位機種にそっくり置き換え(入れ替え)なければなりません。これを「フォークリフトアップグレード」なんていったりします(フォークリフトを使って装置を運ぶイメージ)。それまでの投資を捨てることになりますし、置き換えですから、システムの停止も伴います。
スケールアウト型では、アップグレード時に容量だけではなく重複排除エンジンのリソースも追加しますので、バックアップ時間の増加を抑えます。所定のバックアップウインドウ内に収められることで、バックアップ運用を長く継続できます。装置の増設においては、これまでの装置と混在して継続使用できますので、投資を有効に活用できます。たいてい運用を止めずにアップグレードが可能です。
- まとめ
重複排除バックアップストレージでの重要な要素は、バックアップ速度、リストア速度、アップグレード方式、になります。個人的な意見ですが。
- 補足
関連する過去記事として、「複排除バックアップストレージの意外な盲点」「VMに適切な重複排除バックアップストレージの条件」「ターゲット型バックアップ重複排除処理の種類」があります。
データの増加に関しては、データアーカイブの検討が有効で価値がありますが、今回はデータアーカイブには言及しません。バックアップにのみ着目して単純化した内容です。データアーカイブについては、ちょっと古くなりましたが「データ駆動型社会を支えるデータアーカイブ」という過去記事をご覧ください。
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