LTO-8 販売開始
LTO Ultrium Generation 8(省略形は、LTO 8 または LTO-8)テープドライブが先週の10月10日(米国日時)に販売開始されました。名称から分かるように、LTO第8世代のテープストレージです。
参考:IBM社のプレスリリース(リリース文にリンク)IBM TS4500 Tape Library supports LTO Ultrium 8 tape drive technology
同様のプレスリリースが、あと2件ありますがタイトルのみあげておきます。IBM TS3310 Tape Library with LTO Ultrium 8 drives deliver increase(Announce No. 117-081)とIBM TS3500 Tape Library supports LTO Ultrium 8 tape drive technology capacity and performance for MES or upgrade only(Announce No. 117-077)です。
第1世代の LTO Ultrium Generation 1(LTO 1 または LTO-1)が販売開始されたのは2000年です。そのときの主要仕様は、非圧縮時最大容量が「100GB」、非圧縮時最大転送速度は「15MB/秒」でした。LTOは、開発が17年も続いている希有なシリーズ製品です。
上記のプレスリリースはIBMテープライブラリーに関するニュースですが、その中からLTO 8テープドライブ(Full Height)の主仕様のみを抜粋してみます。
- 非圧縮時最大転送速度:360MB/秒(圧縮時最大転送速度:900MB/秒)
- 非圧縮時最大容量:12TB/カートリッジ(圧縮時最大容量:60TB/カートリッジ)
360MB/秒という転送速度が「速いか遅いか?」ですが、比較のためハードディスクドライブのサステインデータ転送速度の値をみてみましょう。
エンタープライズ仕様15000回転/秒の製品で、内部にある円盤の一番高速になる最外周ゾーンの転送速度は約300MB/秒です。ハードディスクドライブでは記録方式上、円盤の内周に行くに従って転送速度は低くなります。その最内周ゾーンでは、最大値の約半分程度になります。
一方LTOテープドライブでは、データの圧縮機能が備えられています。それが有効に働く場合、最大2.5倍の性能となりますので、900MB/秒という速度に達します。
テープという媒体の構造上、シーケンシャルアクセスになりますが、テープドライブは、映像、音声や画像といった大容量データの蓄積には、ハードディスクドライブや光Discよりも向いています。
下のグラフは「LTO 8」の情報がまだ反映されていませんが、転送速度を比較したJEITAのグラフです。
現在のテープドライブが十分高速なことがおわかりいただけると思います。「テープ」というとイメージされる昔のカセットテープとは全く異なるのです。高速、大容量、そして高信頼性の特徴を生かして現在でも企業のITシステムでは使用されています。
実際のテープの使用例は?
Googleにおいて、Gmailの復旧にも活躍したことはよく知られています。ネットで検索すると下記以外にも記事がヒットします。テープはハイテク企業を陰で支えていますし私たちもその恩恵を受けています。
この記事の最初の方で紹介したPress Releaseに出てきた「Tape Library」(テープライブラリー)ですが、Google等の企業では、テープライブラリーという製品でテープが使われていることが多いのです。
テープライブラリーは内部にテープドライブを複数台搭載し、製品の種類によりますがテープカートリッジ数十巻から数万巻を棚に収納しています。単独または複数のロボットハンドがカートリッジをテープドライブへ入れたり、逆にドライブから取りだしたカートリッジを棚に戻すなどの搬送作業を行います。
装置の大きさは、ラックに搭載できる製品から、それこそ小さな部屋に相当する大きさの大型製品もあります。下の動画を再生させると約9秒後に大型テープライブラリーの内部の様子が映し出されます(その箇所から約60秒の動画を再生します)。
↑ 両側にテープカートリッジを収納する棚が並んでいて、その間を複数のロボットハンドが動き回る様子が分かります。この装置では奥に数十台テープドライブが搭載されているのですが、この動画では隠れていて見えません。
Google Data Centerのストリートビューが公開されています。下の動画の約28秒後に少しテープライブラリーの場面が出てきます(その箇所のみ再生します)。↓
(最初からすべてを再生したいときは、
"こちら"をクリックしてください)
素粒子物理学の研究所として有名なCERN(欧州原子核研究機構)でも使われています。こちらはバックアップというより、データ蓄積ストレージの一部(アーカイブ)としての使われ方をしているようです。ハードディスクだけでは膨大な実験データを格納するにはコスト的に無駄がでるのでしょう。約3分後にテープライブラリーが紹介されています(その箇所のみ再生します)。↓
(最初からすべてを再生したいときは、
"こちら"をクリックしてください)
テープはこれからも使われるの? 将来性は?
テープ、というとその使い道はデータの「バックアップ」と考えられることが多いようです。もちろんそれは間違ってはいないのですが、それだけではありません。データの「アーカイブ」(長期保存)用途に使われていますし、その用途での利用拡大が見込まれます。
現在の蓄積されるデータですが、これまでとはデータの特性が異なり種類も多くなっています。
SNSの発達とその利用ユーザーの拡大によって、動画、写真、音楽、音声などのデータが大量に生成されています。そして以前よりも高画質や高音質のデータになっています。また、IoE(Internet of Everything)のようにセンサーが自動的に収集するデータなども増えています。種類の増加とともに一つ一つのデータ量も大きくなってきています。
これらの蓄積されるデータをアクセス面からみると、すぐは使わないが将来的な利用のために残しておきたい、作成後数十日以後はほとんど参照しなくなる、編集は行わないが蓄積するだけ、といった特性を持つデータが大半を占めることになります(全データ量の80%以上を占めるという説もあります)。
いわゆる「コールド状態」にある大量のデータを効率よく蓄積保存するストレージが、今後のデータ駆動型社会を支える上で重要になってきます。
コールド領域にあるデータ特性(Long Term Archive)に、「省エネ」「高速」「大容量」「長寿命」「高信頼性」「安全性」というテープストレージの特徴が適しているようです。
テープストレージは通常のIT基盤構築以外でも、放送や映像業界のデジタルアーカイブに利用されています。デジタルアーカイブ分野で先行しているのは欧米ですが、日本でも構築が進んでいます。テープライブラリーが活躍している米国と日本の事例があります。
2014年に「LTO 8」までだったロードマップが「LTO 10」まで拡張されたのですが、2017年の今月になって「LTO 12」まで再び拡張されました(ロードマップのリンク:LTO ULTRIUM ROADMAP)。
LTOのロードマップは「LTOコンソーシアム」という業界団体から発表されていますので、確実性が高いと思います。ロードマップ拡張の背景には、市場におけるテープストレージ製品出荷の順調な増加の実績と新たな利用分野の拡大が見込まれるのでしょう。
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